相続・空き家

空き家は貸す・売る・持ち続ける、どれが得か|決める前に並べておく数字

2026/9/19 公開 石川 智士
空き家は貸す・売る・持ち続ける、どれが得か|決める前に並べておく数字

空き家をどうするか決めきれないまま数年が過ぎる、というのはよくあることです。人に聞くたび違う答えが返ってくるからでもあります。家賃8万円前後、貸せる状態にする工事費150〜250万円という目安で、貸す・売る・持ち続けるの3つで何にいくらかかるのかを並べました。

「実家をどうするか、そのうち決めよう」と思っているうちに3年経っていた。空き家のご相談では、これがいちばん多い話です。

決められない理由ははっきりしていて、比べるための数字が揃っていないからです。不動産屋に聞けば「売りましょう」と言われ、リフォーム会社に聞けば「貸しましょう」と言われる。立場が違えば答えも違うので、聞くほど迷います。

なのでここでは、何を数えれば決められるのかを書きます。

3つの選択肢にかかるお金

1. 持ち続ける(管理する)

出ていくお金:固定資産税・都市計画税/火災保険料/電気・水道の基本料金/草刈りや巡回の費用。
入ってくるお金:なし。

この選択肢の落とし穴は、金額が小さく見えることです。年10万円なら耐えられる気がしますが、10年で100万円、しかも建物は確実に傷んでいきます。放置して管理不全空家として勧告を受ければ、土地の固定資産税は最大6倍になります。

それでも「まだ気持ちの整理がつかない」という理由でこれを選ぶのは、私はおかしくないと思っています。ただし、いくらかかっているかは知っておいてください。

2. 貸す

出ていくお金:貸せる状態にするための工事費(ここが一番大きい)/管理委託料/入退去のたびの原状回復費/固定資産税/火災保険。
入ってくるお金:家賃。ただし空室の月はゼロ。

おおよその目安で数字を置いてみます。

  • 戸建ての家賃はおおむね8万円前後。ただし築年数と状態で上下します
  • 管理を委託すると、家賃の5%程度。どこまでを任せるかで変わります
  • 長く空いていた家を「貸せる状態」にする工事は、150〜250万円ほど。水回り一式(ユニットバスの交換だけで100万円前後、給湯器20万円、洗面台15万円)と内装を入れた場合の目安です

この数字で単純に計算すると、家賃8万円なら年96万円。管理料5%を引いて年約91万円。工事費200万円なら2〜3年で回収できることになります。悪くない、と見えます。

試算から抜けているもの

  • 空室の月は収入がゼロです。年間ずっと埋まる前提では計算できません
  • 貸している間に大きな修繕が来ます。屋根・外壁は数百万円規模。給湯器も10年前後で寿命です。工事費を回収し終える前に、次の工事が来ます
  • 退去のたびに原状回復費がかかります
  • そもそも150〜250万円で8万円取れる状態になるとは限りません。傷みが進んでいれば、もっとかかります

だから現場では、「そこまでリフォーム費用をかけるなら、売ってしまったほうが」という結論になることのほうが多いのです。ただ、これは物件によります。立地がよく手を入れる範囲が小さい家なら、貸したほうが得になることもあります。

もうひとつ。相続した空き家を貸すと、3,000万円の特別控除が使えなくなります。売る可能性が少しでもあるなら、貸す前に必ず確認してください。

3. 売る(仲介または買取)

出ていくお金:仲介手数料/登記費用/場合により解体費や測量費/譲渡所得税。
入ってくるお金:売却代金。そして以降の支出がすべて止まります。

ここで効くのが税制です。要件に当てはまれば譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。手取りが大きく変わるので、税金を計算に入れずに「安いから売らない」と決めるのは早計です。

仲介と買取の違いは、時間と金額のどちらを取るかです。買取は市場価格より下がりますが、買主を探す期間がなく、契約不適合責任の心配も基本的にありません。仲介は高く売れる可能性がある代わりに、時間がかかります。

考える順番

多くの方は「貸せるかな、いくらで貸せるかな」から考え始めます。しかし順番はこうです。

  1. いくらで売れるのかを先に知る。これが全ての基準になります。売却額が分からないと、貸した場合の何年分に相当するのかも、持ち続ける費用が高いのか安いのかも判断できません
  2. 貸すのに何が必要かを知る。工事費の概算と、その地域の家賃相場。ここで初めて「何年で回収できるか」が出ます
  3. 持ち続ける費用を年額で出す。税・保険・管理費を合計して、10年分を並べてみる

この3つが並んで初めて比較になります。1番を飛ばして2番から考えると、比較の基準がないまま話が進むので、いつまでも決まりません。

兄弟で話し合うとき

相続した実家で揉めるとき、原因はたいてい金額が分からないことにあります。「二束三文だ」と言う人と「そんなはずはない」と言う人が、根拠なしに話し合っても平行線です。数字がひとつ出るだけで、話はかなり前に進みます。

私たちは西尾市で売買仲介・買取・賃貸管理・空家管理のすべてを扱っています。どの結論になっても対応できる立場なので、「売らせるために売却を勧める」必要がありません。貸したほうがいい物件にはそうお伝えします。

決めてからご相談いただく必要はありません。決められないうちに聞いてください。そのほうが選べる手が多く残っています。

※本記事は一般的な考え方の整理です。実際の費用や税額は物件の状態と個別の事情によります。税金の判断は税理士にもご確認ください。

この記事を書いた人

石川 智士

株式会社JA.life 代表取締役/宅地建物取引士・空き家マイスター・2級FP技能士

愛知県西尾市の株式会社JA.life 代表取締役。宅地建物取引業免許 愛知県知事(1)第25912号。 西尾市・三河エリアを中心に、不動産の売買仲介、買取、賃貸管理、空家・空地の管理を行っています。

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