オーナー・賃貸経営

定期借家とは|更新・再契約と普通借家との違い、オーナーの手続き

2026/11/2 公開 石川 智士
定期借家とは|更新・再契約と普通借家との違い、オーナーの手続き

定期借家契約は、期間が終わると更新されずに終わります。普通借家との違い、契約前の事前説明、満了の1年前から6か月前までの通知、再契約と更新料の考え方まで、オーナーが守る手続きを国土交通省と法令の記載に沿って整理します。

定期借家は「期間が来たら返してもらえる契約」と覚えているオーナーが多いと思います。その理解で間違いはありません。ただ、期間満了で終わらせるには、契約の前と、終わる前の2回、法律に定められた手続きを踏む必要があります。

どちらかを飛ばすと、更新がない旨の定めが無効になったり、満了後も貸し続けることになったりします。定期借家契約(定期建物賃貸借)の仕組み、普通借家との違い、更新と再契約の考え方、オーナー側の手続きを、国土交通省と法令の記載に沿って整理します。

定期借家は更新されずに終わる契約で、普通借家とは正当事由の要否が違います

定期借家は借地借家法38条に定められた制度です。国土交通省は、契約で定めた期間が満了すると、更新されることなく賃貸借契約が確定的に終わる制度と案内しています(定期建物賃貸借Q&A)。条文では、公正証書による等書面で契約するときに限り、更新がないと定められます(借地借家法38条1項)。

普通借家では、貸主が更新を拒むには正当事由が必要です。28条は、貸主と借主が建物を使う必要性、これまでの経過、建物の利用状況と現況、立退料などの申出を考慮して判断すると定めています。

項目

定期借家

普通借家

契約の方法

公正証書等の書面で契約。契約書とは別に、事前に書面を交付して説明する

書面でも口頭でも可

更新

期間満了で終了する。再契約は可能

正当事由がない限り更新される

期間1年未満

有効

期間の定めがない賃貸借とみなされる

賃料の増減

特約の定めに従う

特約にかかわらず増減を請求できる

表は国土交通省の定期借家制度のパンフレットの比較によります。定期借家は期間満了で終わるので、更新を断る正当事由を用意する必要がありません。同省の標準契約書の解説も、正当事由の有無にかかわらず更新がなく終了すると説明しています。その代わり、手続きの不備がそのまま結果に響きます。

定期借家の事前説明は、契約書とは別の書面で契約の前に行います

38条3項は、貸主があらかじめ借主に対し、更新がなく期間の満了で終了する旨を記載した書面を交付して説明するよう定めています。Q&Aは、この書面を契約書とは別に、契約の締結前に交付するものとしています。内容には、更新がないこと、期間満了で確定的に終わること、契約の終了年月日などが考えられるとあります。

見落としやすいのは、仲介会社の重要事項説明では代わりにならない点です。重要事項説明は宅地建物取引業者が行うもの、事前説明は貸主自らが行うものと、Q&Aは区別しています。仲介会社が貸主の代理人として事前説明を行うことはできますが、説明は2つとも必要です。

貸主が説明をしなかったときは、更新がないとする定めは無効になります(38条5項)。定期借家でいちばん重い手続きはここだと、私は考えています。期間満了で返してもらう前提で募集し、賃料も決めたのに、その前提が崩れるからです。Q&Aは、後のトラブルを避けるため記録に残すよう勧めています。

2022年5月18日の法改正で、借主の承諾があれば、書面の交付に代えて電子メールなどで事前説明の内容を提供でき、契約も電磁的記録でできるようになりました(法務省の改正案内)。

期間が1年以上なら、満了の1年前から6か月前までに終了を通知します

期間が1年以上の定期借家では、貸主は期間満了の1年前から6か月前までの間に、期間の満了で終了する旨を借主に通知しなければ、終了を借主に主張できません(38条6項)。期間が1年未満なら通知は要りません。

満了日が3月31日なら、前年の3月31日からその年の9月30日までが通知期間の目安です。国土交通省の標準契約書の頭書には、通知をすべき期間の日付を書く欄があります。契約時に日付まで書き込むと、数え間違いを防げます。

通知が期間を過ぎた場合は、通知の日から6か月を経過した後に終了を主張できます。その間、借主は使い続けられ、賃料も従前どおり支払います。標準契約書の解説は、通知を期間内に行ったことが明らかになるよう、内容証明郵便などで送るのが望ましいとしています。

定期借家に更新はなく、再契約の条件は貸主と借主の合意で決めます

標準契約書の解説によると、定期借家は当事者の合意によっても更新できず、期間満了後に借主が居続けて貸主が異議を述べなくても、民法の黙示の更新は適用されません。続けるなら、新しい契約として再契約を結びます。再契約は定期借家でも従来型の借家契約でも構いません。標準契約書18条は、貸主に再契約の意向があるときは、終了の通知書面にその旨を付記すると定めています。

更新料については、確認した国土交通省のQ&A、パンフレット、標準契約書のいずれにも記載がありませんでした。公式の説明からは、不要とも請求できるとも言えません。分かっているのは、更新という手続きがないこと、再契約を結ぶかどうかも賃料などの条件も合意で決めることです。再契約で何らかの費用を求めるなら、名目と金額を契約書に書き、借主の合意を得ておくのが筋だと私は考えます。

借主の中途解約は条文にあり、貸主からの解除は契約書の条項で決まります

居住用で床面積200平方メートル未満の建物では、転勤、療養、親族の介護などやむを得ない事情で生活の本拠として使えなくなったとき、借主は解約を申し入れられ、申入れの日から1か月で終了します。これに反して借主に不利な特約は無効です(38条7項・8項)。

貸主から期間の途中で終わらせる場合、38条にそのための規定はありません。標準契約書では、賃料の不払いなどの義務違反があり、相当の期間を定めた催告にも応じないときの解除として定めています。途中で終わらせたい事情があるなら、契約書の解除条項に当てはまるかを先に確かめます。

オーナー側の手続きを順に並べます。

  • 契約の前に、事前説明の書面を契約書とは別に作って交付し、受領の日付と署名を残す
  • 契約書に、更新がないこと、期間、終了年月日、通知期間の日付を書く
  • 通知期間の初日をカレンダーに入れ、管理を任せている場合は管理会社とも共有する
  • 通知期間内に、終了を書面で通知する。再契約の意向があればその旨を付記する

参考資料

制度・窓口情報は2026年10月13日時点で確認しています。個別の手続きは担当窓口や専門家にご確認ください。

この記事を書いた人

石川 智士

株式会社JA.life 代表取締役/宅地建物取引士・空き家マイスター・2級FP技能士

愛知県西尾市の株式会社JA.life 代表取締役。宅地建物取引業免許 愛知県知事(1)第25912号。 西尾市・三河エリアを中心に、不動産の売買仲介、買取、賃貸管理、空家・空地の管理を行っています。

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