今の家を売って住み替えたいと考えていたら、条件に合う中古住宅が出てきた。けれども、今の家はまだ査定も受けていない。買う契約を先に結ぶのか、売れるまで待つのか。どちらを選んでも気になる点が残るので、迷う方は少なくありません。
売りが先か買いが先かに、全員に当てはまる正解はありません。ここでは、順番ごとに何が不確かになるのかと、契約書で時期のずれをやわらげる方法に絞って書きます。ローン審査や住みながらの売却準備は、別の記事を見てください。
売り先行と買い先行では、不確かになるものが違う
売り先行は、今の家の売買契約を先に結び、引渡しのあとに新しい家へ移る進め方です。売却代金の見込みが固まってから次の家を探せるため、予算を組みやすい面があります。一方で、引渡し日までに次の家が決まらなければ、仮住まいを挟むことになります。気に入った家が出ても、売却が決まっていないと動きにくい場面もあります。
買い先行は、次の家の購入を先に決める進め方です。希望の家を逃しにくい反面、今の家が売れるまで、二つの家にかかる費用が重なります。二重ローンというと返済だけを思い浮かべがちですが、管理費や税金、光熱費などの維持費も含めて考えたほうが実態に近くなります。
整理すると、売り先行で不確かなのは住まいと日程、買い先行で不確かなのはお金と売却価格です。どちらの不確かさなら引き受けられるかで、向き不向きが分かれます。引っ越しを二度する負担と、売却価格が下がったときの貯蓄の余裕を、家族の事情と照らして考えてみてください。
売れる見通しが立たないまま買うと、返済が重なる
大阪府が公開している不動産取引の紛争事例に、買換えがうまくいかなかった例があります。自宅の売却を業者に任せたまま、新しく買う土地の売買契約を結んだところ、買主が見つからないまま購入の決済日が来て、二重にローンを抱えることになった、という内容です。この事例では、一定の期日までに売却できなければ契約を白紙に戻す特約が付いていませんでした。
売却の見通しが立たない段階で買うなら、契約の前に次の三点を確認します。
- 想定より低い価格で売れたとき、自己資金でいくら補えるか
- 売れるまでの間、二つの家の費用を毎月払い続けられるのはどのくらいの期間か
- 期限までに売れなかったとき、購入を取りやめる手段が契約書にあるか
査定額は売れる価格の保証ではないので、計算には低めの価格を置いておくと安全です。今のローンが残っている状態で新しい借入れを審査してもらえるかは、金融機関によって扱いが違うことがあります。購入契約の前に、借入先へ確認してください。
時期のずれをやわらげる契約上の工夫は3つ
売却と購入の時期を完全にそろえるのは難しくても、契約書に条件を書き込むことで、ずれの影響を小さくできる場合があります。ただし、どれも相手方の同意が必要で、必ず付けられるものではありません。
1つ目は買換え特約です。一定の期日までに今の家が売れなかったら購入契約を白紙に戻せる、という特約です。大阪府のページも、売却できなかった場合に備えて、白紙解除する旨を契約書に明記するよう注意を促しています。期日をいつにするか、白紙にしたとき手付金をどう扱うかは契約ごとの取り決めなので、付けられる前提で話を進めず、早めに不動産会社へ相談します。
2つ目は、条件の置き方です。民法127条は、停止条件が付いた法律行為は条件が成就した時から効力を生じ、解除条件が付いたものは成就した時から効力を失うと定めています。今の家の売買契約が成立したら購入が有効になる形と、売れなければ購入を白紙にする形は似ていますが、条件の置き方が逆です。どちらの形にするか、条件が満たされなかったときの精算をどうするかは、文面で確かめます。
3つ目は引渡し猶予です。代金を受け取ったあとも、売主が一定期間住み続けてから引き渡す、という取り決めがあります。公的機関がこの言葉を定義したページは確認できませんでしたが、契約書の特約として書き込める内容です。全国宅地建物取引業協会連合会の売買契約書の書式例は、売主が期日までに代金全額の受領と同時に物件を引き渡すと定め、これと異なる約束は特約条項に記載する形です。猶予を設けるなら、買主の同意を得たうえで、特約として書面に残すことになります。
猶予が長くなるほど買主の負担も増えるため、認められるとは限りません。猶予の間の維持費や、設備が壊れたときの扱いも書面で決めます。同じ書式例には引渡し前の天災による滅失・損傷の条項もあるので、猶予中にそうなった場合の扱いも宅建士に確認します。
住み替えの税の特例は、順番を決める前に確認する
住み替えには、税の特例が関わる場合があります。国税庁のタックスアンサーには、二つの制度が載っています。一つは、特定のマイホームを買い換えたときの特例(No.3355)で、売った家の譲渡益への課税を将来に繰り延べるものです。非課税になるわけではありません。売った家の居住期間や所有期間、売却代金、新居の面積などに要件があり、買い換える時期も、売った年の前年から翌年までの間とされています。
もう一つは、買い換えで譲渡損失が出たときの、損益通算と繰越控除の特例(No.3370)です。売った家の所有期間や新居の床面積、住宅ローンの返済期間などの要件があります。どちらの特例も、他の特例との併用に制限があり、売却の期限も定められています。いつ売るかを決める前に、確認しておく必要があります。
自分のケースで使えるかは、契約を結ぶ前に税務署か税理士へ確認してください。
西尾市で今の家を売って住み替えるなら、まず、売れるまでの間、二つの家の費用を毎月いくらまで払えるかを書き出してください。その金額が、買い先行で進められるか、売り先行にするかを決める最初の材料になります。
参考資料
- 国税庁「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」
- 国税庁「No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき」
- 大阪府「不動産取引の紛争事例」
- e-Gov法令検索「民法」
- 全国宅地建物取引業協会連合会「不動産売買契約書(土地建物公簿用)」
制度・窓口情報は2026年10月12日時点で確認しています。個別の手続きは担当窓口や専門家にご確認ください。



