実家の土地を売ろうとして、古い家が建ったままになっている。壊してから売るべきか、そのまま出してよいのか。不動産会社から「古家付き土地として出しましょう」と言われても、何が変わるのかが分かりにくいと思います。
押さえる点は2つです。解体費用を誰が払うのかを、契約書に書いておくこと。そして、現況渡しという言葉に、責任をなくす力はないと知っておくことです。
古家付き土地とは、古い建物が残ったまま土地として売る形です
古家付き土地は、売り出しの場面で使われる呼び方です。建物は残っているものの、価格の中心は土地に置き、建物の価値は大きく見込まない売り方を指します。買主が壊して建て替える場合が目立ちますが、そのまま住める家が付くこともあります。
広告に古家付き土地と書かれていても、建物の傷み具合は分かりません。売主が建物の状態をどう説明し、契約書にどう書くかで、後の話が大きく変わります。
更地で売るか古家付きで売るかは、解体費を先に払うかどうかの違いです
項目 | 解体して更地で売る | 古家付きのまま現況で売る |
|---|---|---|
解体費用 | 売主が先に払う | 契約で決める(売主、買主のどちらもあり得る) |
売れないとき | 解体費を払ったあとも、土地の管理が続く | 建物の管理が続く |
売主の手間 | 業者の手配、解体の届出、建物滅失登記 | 買主が解体する契約なら、売主の解体手続きは要らない |
更地にすれば売りやすくなる、とは限りません。解体費を払って買い手が付かなければ、費用は戻りません。私は、買主の見込みが立つ前に解体を発注するのはおすすめしません。まず現況のままの査定額を知り、更地にした場合と比べてください。
解体の届出、固定資産税、滅失登記は解体前に確かめる4つの記事に、直してから売る場合は築40年の家は直して売るかの記事にまとめています。
解体費用を誰が払うかは、契約で決める条件です
「古家付きだから買主が払う」「売るのだから売主が払う」と、あらかじめ決まっているわけではありません。売買契約で当事者が決めます。進め方は3つあります。
- 売主が契約前に解体し、更地で引き渡す。費用は売主
- 売主が契約後、引渡しまでに解体する。費用は売主。期限と、間に合わなかったときの扱いを書く
- 買主が引渡し後に解体する。費用は買主。解体費を見込んで売買価格を決めることがある
3つ目なら売主は解体費を立て替えずに済みますが、買主から値引きを求められることもあります。解体費の先払いを避けたいなら、私は3つ目から検討します。決めておくのは、誰が、いつまでに、いくらの見積りで解体するのか、価格にどう反映するのか、の3点です。口頭で「買主さんが壊すそうです」と聞いただけで進めると、引渡しの直前に食い違いが出ます。解体費の金額は物件で変わるため、ここには書きません。
現況渡しは「そのままの状態で引き渡す」約束で、責任をなくす約束ではありません
現況渡しは、契約書では「現状有姿」と書かれることもあります。引渡しの時の状態のまま引き渡す、という意味です。国民生活センターの月刊誌「国民生活」2023年7月号の弁護士による解説では、この条項は品質についての合意ではなく、契約不適合責任を負わない特約とも異なる、と説明されています。引渡し後に不具合が見つかったとき、責任の追及は妨げられない、とも書かれています。
同じ解説によると、責任を負わない特約は、民法上は原則として有効です。ただし民法572条は、売主が知りながら告げなかった事実については、その特約があっても責任を免れないと定めています。1年以内の通知を求める566条も、売主が引渡しの時に不適合を知っていたか、重大な過失で知らなかったときは使えません。
古家付き土地に当てはめると、「古い家だから、何があっても現況渡しで済む」とは言えません。傾きや腐食、雨漏りを知っていながら伝えなければ、現況渡しと書いてあっても守られない場合があります。逆に、老朽化していて買主が解体する前提だと契約書に書いてあれば、建物の傷みが契約の内容に合っているかどうかの判断は、その書き方に左右されます。前掲の解説も、契約の具体的な内容が判断のポイントだとしています。
古家付き土地のトラブルを防ぐ、契約書に書く5つの項目
トラブルは、決めていなかったこと、書かなかったことから起きます。署名の前に、契約書案で次の5つを探してください。
- 建物の状態:知っている傷みや修繕の履歴。買主が解体する前提かどうか
- 残置物:残すのか、誰がいつまでに処分するのか(残置物の記事)
- 解体の時期と費用負担:誰が、いつまでに、いくらの見積りで行うか
- 地中の物:古い基礎や配管などが出てきたとき、誰が対応するか
- 境界と敷地の情報:境界確定の状況、測量図の有無(境界の記事)
知っていることを伝える方法が告知書です。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」は、売主しか分からない事項について、売主の協力が得られるときは告知書を買主に渡すことを、紛争の防止に役立つとして、積極的に行うことが望ましいとしています。記載例には、土地では境界確定の状況や過去の利用状況、建物では修繕の履歴、石綿の使用の有無の調査の存否、傾きや腐食等の存否などが挙がり、記載は売主が知り得る範囲でよいとされています。
売主に求められるのは、知っていることを書き漏らさないことです。免責の一文で安心するより、告知書で買主と状態を確かめ合うほうが、後で自分を守ります。
愛知県で古家付き土地を売る前に、順番を決めておく
- 解体を発注する前に、現況のままの査定を受ける
- 図面、測量図、修繕の記録など、手元の資料を集める
- 解体を買主に任せるのか、売主が行うのかを、売り出す前に決める
- 契約書案の現況渡し、解体、残置物の条項に印を付け、署名の前に質問する
契約書の内容で迷ったときは、愛知県県民相談・情報センターが窓口です。愛知県の案内では、建設工事・不動産取引紛争相談は弁護士や建築士による無料相談で、毎週水曜日の13時から16時、予約制、1回40分以内です。予約は052-962-5100です。
壊すか壊さないかを決めるより先に、誰が何を負担し、何を伝えたのかを紙に残してください。
参考資料
- e-Gov法令検索「民法」
- 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(令和8年4月1日施行版)
- 国民生活センター「国民生活」2023年7月号 誌上法学講座「契約の内容が守られないとき(2)」
- 愛知県「宅地建物取引に関する情報」
制度・窓口情報は2026年10月13日時点で確認しています。個別の手続きは担当窓口や専門家にご確認ください。



