不動産を売って利益が出ると、その利益に所得税と住民税がかかります。つまずきやすいのは税率の高さより、短期か長期かの区分です。売った土地や建物を「買ってから5年」で数えると、区分を取り違えます。
この記事では、国税庁の公式説明で確認できた範囲で、譲渡所得の式、所有期間の数え方、短期と長期の税率を整理します。税額や特例の判断は、売る前に税務署か税理士に確かめてください。
譲渡所得とは、売った金額から取得費と譲渡費用を引いた利益のことです
国税庁は、土地や建物を売って生じる譲渡所得を、給与などの所得と分けて計算する分離課税と案内しています(No.3202)。税金がかかるのは売却代金そのものではなく、そこから次の2つを引いた利益です。
- 取得費:買ったときの購入代金や手数料に、その後の改良費などを加えた額。建物は所有期間中の減価償却費相当額を差し引く
- 譲渡費用:売るために直接かかった費用。仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、取壊し費用など
特別控除は通常ありません。マイホームの3,000万円控除のような特例の要件を満たす場合に限ります。相続した空き家の控除は別の制度で、こちらの記事で扱っています。
売却益の計算方法は、式1本と概算取得費の5%です
課税される売却益は、国税庁のNo.3208で、譲渡価額(収入金額)-(取得費+譲渡費用)-特別控除額と示されています。特例を使わないなら、最後の項はゼロです。
仮の数字で確かめます。実際の相場や当社の実績ではありません。2,480万円で売り、取得費が減価償却費相当額を引いたあとで1,760万円、譲渡費用が120万円なら、2,480万円-(1,760万円+120万円)=600万円です。
購入時の契約書や領収書が見つからないときは、概算取得費があります。取得費が分からない場合や、実際の取得費が売った金額の5パーセントを下回る場合は、売った金額の5パーセント相当額を取得費にできます(No.3258)。2,480万円なら124万円で、売却益は2,480万円-(124万円+120万円)=2,236万円になります。5%は書類が出てこないときの手段なので、先に契約書や領収書を探してください。
所有期間5年は、購入から5年ではなく、売った年の1月1日で判定します
国税庁は、長期譲渡所得を、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるものと区分しています。5年以下は短期です。所有期間は取得の日から引き続き所有していた期間で、基準は売った日までの経過年数ではなく、売った年の1月1日です。
国税庁のパンフレット「土地や建物を売ったとき」は、令和8年(2026年)中に売る場合、取得が2020年12月31日以前なら長期、2021年1月1日以後なら短期と例示しています。これを取得日と売った日の組にしました。どちらも2026年12月28日に売ります。
取得日 | 売った日までの期間 | 2026年1月1日時点 | 区分 | |
|---|---|---|---|---|
ケースA | 2021年1月1日 | 5年11か月ほど | ちょうど5年 | 短期 |
ケースB | 2020年12月31日 | 5年11か月ほど | 5年と1日 | 長期 |
Aは売った日までに5年11か月ほど持っていますが、1月1日の時点で5年を超えていないので短期です。取得が1日早いBは長期になります。「購入から5年たったから長期」と数えると、Aの区分を取り違えます。
年末の売却は、年をまたぐかどうかも確認します。国税庁のNo.3102によると、譲渡した日は原則として買主に引き渡した日で、売買契約の効力発生日として申告することもできます。どちらで申告するかは、契約前に税務署へ確認してください。税率の差だけを理由に、買主と決めた引渡しの時期を動かすのは勧められません。
短期と長期の税率は、所得税が30%と15%、住民税が9%と5%です
区分 | 売った年の1月1日現在の所有期間 | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|---|
長期譲渡所得 | 5年を超える | 15% | 5% |
短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% |
これに、所得税額の2.1%の復興特別所得税が加わります。国税庁の数字から計算した合計は、長期が20.315%、短期が39.63%です。先ほどの600万円で比べます。No.3211の計算方法に当てはめた例です。
項目 | 長期 | 短期 |
|---|---|---|
所得税 | 600万円×15%=90万円 | 600万円×30%=180万円 |
復興特別所得税 | 90万円×2.1%=1万8,900円 | 180万円×2.1%=3万7,800円 |
住民税 | 600万円×5%=30万円 | 600万円×9%=54万円 |
合計 | 121万8,900円 | 237万7,800円 |
同じ利益でも税額は115万8,900円違います。この計算は2026年中に売る場合(令和8年分)です。パンフレットには令和9年分以後は「防衛特別所得税及び復興特別所得税」になるとあるため、2027年以降に売るなら上乗せ部分を国税庁の最新の案内で確かめてください。
相続や贈与で取得した場合は、前の所有者の取得日から数えます
国税庁は、相続や贈与で取得したときは、被相続人や贈与者の取得の時期が引き継がれると案内しています(No.3270)。判定は、被相続人や贈与者が取得した時から、売った年の1月1日までの期間で行います。
仮の例です。親が2008年に買った家を2025年に相続し、2026年に売るなら、2026年1月1日までに17年を超えているので長期です。相続して1年で売るから短期、とはなりません。長期の手取りの計算は相続した家の手取りの記事にあります。
取得費にも違いが出ます。実額で計算するなら、業務に使っていない土地や建物については、相続人が払った登記費用なども取得費に含まれます。概算取得費の5%を使う場合は、含められません。
不動産売却の税金をシミュレーションするなら、5つの数字を集めます
- 売る金額の見込み
- 取得費(契約書や領収書。なければ売った金額の5%)
- 譲渡費用
- 使える特別控除の有無
- 取得日(相続や贈与なら前の所有者の取得日)と、売る年
この5つがあれば、ここまでの式と表で目安は出せます。売る金額の見通しが要るので、先に査定を取ります。当社の査定は、取引事例を並べるだけでなく、現地を自分で調査し、調査報告書で根拠をお見せしています。
売ったあとの申告は、譲渡した日の属する年の翌年2月16日から3月15日の間に行うのが原則です。確定申告書、申告書第三表、譲渡所得の内訳書(土地・建物用)を作り、他の所得と一緒に所轄税務署へ出します。愛知県や三河エリアで売る方は、売買契約書で取得日を確かめて相談してください。
参考資料
- 国税庁「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」
- 国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」
- 国税庁「No.3211 短期譲渡所得の税額の計算」
- 国税庁「No.3258 取得費が分からないとき」
- 国税庁「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」
- 国税庁「No.3102 譲渡所得の申告期限」
- 国税庁「土地や建物を売ったとき」(パンフレット「暮らしの税情報」令和8年度版)
制度・窓口情報は2026年10月13日時点で確認しています。個別の手続きは担当窓口や専門家にご確認ください。



