相続・空き家

親が施設に入った後の実家を売る|西尾市で判断力が不安なとき

2026/10/27 公開 石川 智士

親が施設に入った後、名義が親のままの実家を西尾市で売れるのか。売却は名義人本人の意思で行うこと、判断能力が不十分な場合の成年後見制度、居住用不動産の売却に必要な家庭裁判所の許可を、公的機関の案内で整理します。

親が施設に入り、実家が空き家になった。管理や固定資産税の負担を考えると売りたいが、登記を見ると名義は親のままです。最近は話が噛み合わない、という方もいます。ここで「子どもが代わりに売ればいい」と考えると、最初でつまずきます。

実家を売る主役は名義人本人です。本人に判断する力が残っているかどうかで、進め方は二つに分かれます。裁判所、法務省、厚生労働省の案内で確認できる範囲で、その分かれ目と、家庭裁判所の許可が要る場面を整理します。個々の方に判断能力があるかどうかは、この記事では決められません。

実家の売主は名義人本人で、子が自動的に代理人になるわけではありません

まず登記事項証明書で名義人を確かめます。名義が親ひとりなら、売買契約の売主は親です。法定後見の仕組みでは、本人に代わって契約をするのは家庭裁判所が選んだ後見人で、子であることを理由に代理人になる仕組みではありません。

「委任状があれば子が進められる」とも言い切れません。民法は、意思表示をした時に意思能力がなかったときは、その法律行為を無効としています(民法3条の2)。委任状を書いた時点でも売買契約の時点でも、本人に判断する力があったかが問われる可能性があります。判断が難しくなってから、本人の名前を代わりに書いたり、印鑑だけ預かって進めたりする形は避けてください。

本人が自分の意思で売ると決められる状態なら、売主は本人のままです。売りたい理由、手放したい時期、価格の目安、本人が契約や引渡しの場に出られるかを、先に聞いて書き留めておきます。

判断能力の見立ては、家族や不動産会社が決めるものではありません。後見の手続では、家庭裁判所が医師の診断書や鑑定などをもとに判断します。迷う段階なら、かかりつけ医と、弁護士か司法書士に早めに相談してください。将来に備える方法としては任意後見もあります。法務省の案内では、本人に十分な判断能力があるうちに、任せる相手と事務の内容を公正証書の契約で決めておく制度です。

判断能力が不十分なときは、成年後見制度で本人に代わる人を選びます

判断能力が不十分になった後は法定後見を使います。法務省のQ&Aでは、本人の状態に応じて後見、保佐、補助の3つがあり、不動産の売却との関わりは次のように違います。

類型

対象となる方

不動産の売却との関わり

後見

判断能力が欠けているのが通常の状態の方

成年後見人が財産に関する法律行為を本人に代わって行う

保佐

判断能力が著しく不十分な方

不動産の売買には保佐人の同意が必要。代理権は審判で与えた行為に限る

補助

判断能力が不十分な方

申立ての範囲で家庭裁判所が定めた行為だけ、同意や代理ができる

裁判所の案内によると、申立てができるのは本人、配偶者、四親等内の親族などで、申立先は本人の住所地の家庭裁判所です。

居住用の不動産は、後見人でも家庭裁判所の許可がなければ売れません

後見人が選ばれれば売れる、とはなりません。民法859条の3は、成年後見人が本人に代わって、居住の用に供する建物やその敷地を売却したり、貸したり、抵当権を設定したりするには、家庭裁判所の許可を得なければならないと定めています。

この「居住用」は、いま住んでいる家だけではありません。裁判所は、施設に入所していて現在は住んでいない場合や、入所前に住んでいた場合も含むと案内しています。親が施設に入った後の実家は、これに当たりうる家です。許可を得ない処分は無効になります。

許可が要るのは売却だけでなく、賃貸借契約の締結や解除、建物の取り壊しも同じです。「売らずに貸すなら許可はいらない」とは考えないでください。保佐人と補助人は、不動産を処分する代理権を与えられている場合に限り、同じ申立てをします。売却する場合の申立書には、不動産業者が作った査定書を添える項目があります。査定を取るだけなら、後見の手続を待たずに始められます。

手続は数か月単位で、売却が終わっても後見は続きます

裁判所は、申立てから審判までおおむね1か月から2か月程度で、鑑定を行う場合はさらに期間が必要と案内しています。法務省は、多くの場合、申立てから開始までは4か月以内としています。書類をそろえる時間は別で、そのあとに居住用不動産の処分許可の申立てが続きます。

  • 申立書に書いた候補者が選ばれるとは限らず、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれる場合もある。選ばれた人への不服申立てはできない
  • 後見人への報酬は家庭裁判所が決め、本人の財産から支払われる
  • 後見は、本人の能力が回復するか本人が亡くなるまで続く。実家を売り終えても、家族の意思ではやめられない

売却だけが目的の申立ては、軽く決めるものではありません。施設の費用が心配で売ろうとしているなら、本人の預貯金や年金で当面まかなえるかを先に確かめます。待つあいだの実家の持ち方は空き家の活用を比べた記事に、実家じまい全体の流れは実家じまいの記事にあります。

相談先は西尾市成年後見センターと家庭裁判所です

西尾市には、成年後見制度の相談や支援を行う西尾市成年後見センターがあります。西尾市総合福祉センター1階(花ノ木町2丁目1番地)で、電話は0563-56-5900、開所は月曜日から金曜日の午前8時30分から午後5時15分(祝日・年末年始を除く)、相談は無料と案内されています。市のページの更新日は2021年6月のため、訪ねる前に電話でご確認ください。

厚生労働省の案内では、法定後見の相談は権利擁護相談窓口、手続は最寄りの家庭裁判所、任意後見は公証役場です。

不動産会社には、名義人、施設に入った時期、診断や後見の手続の有無、きょうだいの状況を先に伝えてください。当社の査定は、現地を自分で調査し、調査報告書で根拠をお見せしています。家庭裁判所に出す資料として使えるかどうかは、申立先の裁判所にご確認ください。

参考資料

制度・窓口情報は2026年10月11日時点で確認しています。個別の手続きは担当窓口や専門家にご確認ください。

この記事を書いた人

石川 智士

株式会社JA.life 代表取締役/宅地建物取引士・空き家マイスター・2級FP技能士

愛知県西尾市の株式会社JA.life 代表取締役。宅地建物取引業免許 愛知県知事(1)第25912号。 西尾市・三河エリアを中心に、不動産の売買仲介、買取、賃貸管理、空家・空地の管理を行っています。

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