親が亡くなり、実家を相続して売ることにした。名義の手続、預金の解約、税の申告と進むうちに、窓口ごとに戸籍謄本一式の提出を求められる場面が出てきます。出生から亡くなるまで連続した戸籍は、集めるだけでも一仕事です。
この束を何度も出し直さずに済ませる仕組みが、法務局の法定相続情報証明制度です。この記事では取得の手順に絞って、愛知県の読者が迷いやすい申出先まで整理します。
法定相続情報証明制度は、戸籍の束の代わりになる写しを無料でもらう仕組みです
法務局の案内によると、相続人が相続関係を一覧にした図(法定相続情報一覧図)を戸除籍謄本等とあわせて登記所に出すと、登記官が民法の相続関係と合っているかを確認し、認証文を付した写しを無料で交付します。平成29年5月に始まった制度です。
不動産が複数の管轄にまたがると、相続登記ではそれぞれの法務局に戸除籍謄本等の原本の束を出す必要があります。一覧図の写しは束の代わりに使えるので、複数の法務局に束を出さずに済みます。ただし、戸籍の束で手続する方法がなくなるわけではなく、束に代わる選択肢が一つ増えた、という位置づけです(法務省民事局の資料)。
申出人になれるのは、被相続人の相続人か、その相続人の地位を引き継いだ人です。代理人には、親族のほか、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、行政書士を選べます。戸除籍謄抄本を出せない場合(日本国籍がないときなど)は使えません(法務局「具体的な手続」)。
用意する書類は4種類で、取得先がばらばらです
必ず用意する書類は次の4つです(法務局の一覧)。
書類 | 取得先 | 注意点 |
|---|---|---|
被相続人の戸除籍謄本 | 被相続人の本籍地の役所 | 出生から亡くなるまで連続したもの |
被相続人の住民票の除票 | 最後の住所地の役所 | 取れないときは戸籍の附票 |
相続人全員の現在の戸籍謄本か抄本 | 各相続人の本籍地の役所 | 被相続人の死亡日以後のもの |
申出人の氏名・住所を確認できる公的書類 | なし | 運転免許証の表裏のコピー、マイナンバーカードの表面のコピー、住民票記載事項証明書など |
戸籍を請求するときは、相続手続に使うため出生から死亡までの連続したものが要ると役所に伝えます(法務局「よくあるご質問」)。次の書類は場合によって必要です。
- 一覧図に相続人の住所を書くとき:各相続人の住民票記載事項証明書(住所を書くかは任意)
- 代理人に頼むとき:委任状
- 兄弟姉妹が相続人になるときなど:被相続人の親に関する戸除籍謄本
戸除籍謄本等は、写しの交付時に返却されます。一覧図の様式と記載例は法務局のページにあります。
申出先は4つの地から選べるので、愛知県でも遠い本籍地まで行く必要はありません
申出先は、次の4つの地を管轄する登記所のどれでもかまいません。
- 被相続人の本籍地(死亡時の本籍)
- 被相続人の最後の住所地
- 申出人の住所地
- 被相続人名義の不動産の所在地
本籍が県外でも、申出人が愛知県内に住んでいれば、自分の住所地を管轄する登記所に申出できます。三河の主な市の管轄は、名古屋法務局の一覧(2026年7月18日更新)で次のとおりです。
市町 | 登記所 |
|---|---|
岡崎市、額田郡幸田町 | 岡崎支局 |
安城市、刈谷市、知立市、碧南市、高浜市 | 刈谷支局 |
西尾市 | 西尾支局 |
豊橋市、田原市 | 豊橋支局 |
豊川市、蒲郡市 | 豊川出張所 |
豊田市、みよし市 | 豊田支局 |
申出と写しの受取りは、窓口のほか郵送でもできます。郵送で受け取るなら、その旨を申出書に書き、返信用の封筒と切手を同封します。オンラインでの申出は、確認した法務局の案内ページに記載がありませんでした。使えるかどうかは、申出先の登記所に確認してください。
写しは複数通もらえますが、一覧図で分かるのは戸籍の上の相続人だけです
写しは必要な範囲で複数通交付されます。制度は無料ですが、戸籍謄本の手数料と郵送料は別にかかります。一覧図は申出日の翌年から5年間保管され、この間は再交付を受けられます。受けられるのは申出人として氏名を書いた人だけで、他の相続人が欲しいときは委任が要ります。写しの有効期限は、確認した公式ページに書かれていません。
- 戸除籍謄本の記載に基づくため、相続放棄や遺産分割協議の結果は反映されません。実際には相続しない人も載ります
- 相続人の住所を書くと、相続登記などで住民票の提供が不要になることがあります。ただし交付後は、住所が変わっても再申出できません(法務局「記載例」)
- 続柄を「子」と書く選択もできますが、相続税の申告など使えない手続があります。戸籍どおりの続柄なら、原則として相続税の申告書の添付に使えます(法務局「利用範囲の拡大」)
売却の前に役立つのは、相続登記や預金・税の手続を並行して進める場面です
法務局が写しを使える手続に挙げているのは、相続登記の申請、被相続人名義の預金の払戻し、相続税の申告、年金等の手続などです。使えるか分からなければ、提出先に問い合わせるよう案内されています。窓口が相続登記の1か所だけなら、一覧図を作る手間の分だけ遠回りになります。不動産が複数の管轄にまたがる、預金口座が複数ある、といったときに取る価値が出ます。
家を売る予定なら、まず登記簿の名義が亡くなった方のままかを確認します。相続登記が要るなら、写しを束の代わりに使えます。令和6年4月1日からは、登記の申請書に法定相続情報番号を書けば写しの添付を省けますが、この番号は不動産登記の申請等でしか使えず、申出から5年以上たつと使えない場合があります。相続登記とあわせて売買による所有権移転登記をするときは、現在の住所を証する住民票等が別に要ることもあります(法務局「添付省略について」)。
手順は、書類を集める、一覧図と申出書を作る、申出先を選んで窓口か郵送で出す、の順です。写しを受け取ったら、提出先ごとに写し以外の必要書類を確認します。名古屋法務局も、必要書類は提出先で異なると案内しています(名古屋法務局の案内)。相続登記の期限は相続登記の記事、兄弟の共有は共有名義の記事、売却後の手取りは手取りの記事をご覧ください。
参考資料
- 法務局「法定相続情報証明制度について」
- 法務局「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」
- 法務局「必ず用意する書類/必要となる場合がある書類」
- 法務局「よくあるご質問」
- 法務局「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」
- 法務局「利用範囲の拡大について」
- 法務局「法定相続情報番号の提供による…添付省略について」
- 法務省民事局「法定相続情報証明制度について」
- 名古屋法務局「法定相続情報証明制度の管轄区域一覧」
- 名古屋法務局「相続・遺言に関する手続のご案内」
制度・窓口情報は2026年10月12日時点で確認しています。個別の手続きは担当窓口や専門家にご確認ください。



