実家は西尾市にあるのに、自分は遠方に住んでいて、様子を見に行けない。草は伸びていないか、屋根は無事か、気になりながら月日が過ぎていく。見回りを誰かに頼みたくなるのは、こういうときです。
頼み先を選ぶとき、先に見てしまうのは料金です。ただ、何を見てくれるのか、どんな形で報告が届くのか、何かあったら誰に連絡が行くのかが分からないと、払った分の安心が手に入るか判断できません。西尾市が案内している見回りサービスと民間の管理サービスを、同じ7つの軸で比べてみます。
空き家の管理は所有者の責務で、遠方なら委託が現実的です
国土交通省の「不動産業者による空き家管理受託のガイドライン」は、空き家の管理は所有者等が自ら行うことが原則だと説明しています。空家法第5条が、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう適切に管理することを所有者等の責務としているためです。同じ資料は、空き家は不具合が見つかりにくく傷みが早く進むので、一定の頻度の点検が必要だとも書いています。
自分で通えない人は少なくありません。ガイドラインには、居住地から空き家まで1時間を超える所有者が約3割という数字が載っています(令和元年の国土交通省の調査)。自分で管理するのが難しいときは、第三者への委託も有力な選択肢だとしています。
注意したいのは、頼んでも所有者の責任が消えない点です。ガイドラインは、管理を委託しても、空き家の状態によっては所有者に経済的な不利益が生じうると述べています。国土交通省の管理不全空家等に関する指針によれば、管理不全空家等として市町村長の勧告を受けると、その敷地は固定資産税の住宅用地特例の対象から外れます。勧告に至る流れは空き家の固定資産税が6倍になる条件に書きました。見回りは、その手前で状態を知る手段です。
西尾市の見回りサービスを行うのは、市ではなくシルバー人材センターです
西尾市は、令和2年10月1日に公益社団法人西尾市シルバー人材センターと空家等対策の協定を結びました。市の案内ページによると、見回りを行うのはセンターの会員で、市の役割は所有者への紹介と周知です。
基本プランは見回り1回につき2,700円で、除草や庭木の伐採などは要見積りのオプションです。サービス内容と問い合わせ先は実家じまいの記事で紹介したので、ここでは繰り返しません。押さえておきたいのは、料金が見回り1回ごとに示されていることと、案内ページの更新日が2023年9月1日であることです。現在の料金は、申し込む前に窓口で確認してください。
見回りの頼み先は、7つの軸で並べると違いが見えます
西尾市の案内で分かることと、案内に載っていないことを軸ごとに分けました。載っていない項目は、できないのではなく、聞かないと分からないということです。民間の事業者にも同じ質問が使えます。
軸 | 西尾市の案内で分かること | 契約前に確認すること |
|---|---|---|
頻度 | 料金は見回り1回あたり。月に何回かは載っていない | 月1回か季節ごとか。回数を書面に残せるか |
報告の形 | 見回り後に報告書を作成し、送付する | 写真の有無、届くまでの日数、異常時は報告書を待たず連絡があるか |
鍵の預け方 | 載っていない | 鍵を預けるのか、預けず外から見るだけか。預けるなら保管と持ち出しの記録 |
屋内外の範囲 | 建物の外観の目視点検と敷地の確認。屋内は載っていない | 窓を開けて風を通す作業が含まれるか |
緊急時の連絡 | 載っていない | 台風の後や不法侵入の形跡があったとき、誰が誰に、いつ連絡するか |
費用の出し方 | 基本プラン1回2,700円。除草や伐採は要見積り | オプションが出たときの見積り方法、年間でいくらになるか、支払いの時期 |
契約の期間 | 載っていない | 期間、更新、途中解約のしかた |
頼み先をほぼ決めてしまうのは、屋内外の範囲です。外観と敷地の確認だけでよいなら、市が案内するサービスの内容と合います。建物の中の通風や換気まで任せたいなら、案内に載っていない以上、センターに直接聞く必要があります。ガイドラインも、遠方の所有者が建物内部の作業をするのは難しく、受託者が定期的に巡回して通風や換気を行うことを想定しています。
民間の管理サービスは、料金表より契約書で比べます
民間の料金は事業者ごとに違うので、金額は挙げません。比べるときに頼れるのは、先ほどのガイドラインが契約書に定めることとして挙げている項目です。作業の内容と頻度、報酬と支払い時期、再委託、責任と免責、完了報告、契約期間、個人情報の扱い、移動が難しい家財の扱いです。
ガイドラインは背景として、空き家管理の業務を適正化する制度が存在しないと述べています。見積書だけでなく、契約書の案を先にもらえるかを聞いてください。
- 契約前に、敷地と建物内を双方で見て、傷みや家財の状況を書面に残すか
- 責任の範囲はどこまでか(天災などの損害の扱いも、事前に定めることが望ましいとされています)
- 電気、水道、ガスをどうするか、料金は誰が払うか
- 貴重品は契約の前に持ち出す前提か
最後の点は、頼む側の準備にもなります。貴重品と動かせない家財の扱いを決めておくと、見積りの話が早く進みます。片付けは空き家の残置物の記事にまとめています。
見回りは出口ではないので、その先の方針とセットで決めます
見回りの費用は、頼み続ける限りかかります。基本プランを月1回頼むと、単純計算で年に32,400円です。除草などのオプションは別なので、草が伸びる夏に入れると総額は変わります。
見回りは、売るか貸すか持ち続けるかを決めるまでをつなぐ手段です。方針が決まらないまま年単位で続けるなら、見回りの費用と、決めずにいる間の傷みを並べて考える時期が来ます。比べ方は空き家を貸すか、売るか、持ち続けるかに書きました。
管理と売却をまとめて相談できる窓口もあります。市の「空家等の相談窓口」のページには、「管理が大変」「売却したいが何から始めればいいか分からない」といった悩みごとの相談先が載っています。市は、相談の結果生じたトラブルや契約には責任を負わないとしており、費用がかかる場合もあるため、事前に確認してください。
参考資料
- 西尾市「西尾市シルバー人材センターと『西尾市における空家等対策の推進に関する協定』を締結!」
- 西尾市「【所有者・相続人向け】空家等の相談窓口について」
- 国土交通省「不動産業者による空き家管理受託のガイドライン」
- 国土交通省「管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針」
制度・窓口情報は2026年10月11日時点で確認しています。個別の手続きは担当窓口や専門家にご確認ください。



