相続・空き家

小規模宅地等の特例とは|自宅の土地の評価が下がる要件と手続き

2026/10/28 公開 石川 智士
小規模宅地等の特例とは|自宅の土地の評価が下がる要件と手続き

小規模宅地等の特例とは何か、自宅の土地で使える要件、申告期限の前に売ると要件を外れる場合があること、基礎控除の式、チェックシートと必要書類を、国税庁の公式ページで確認した内容に絞って整理します。個別の判断は税務署か税理士へ。

親から自宅を相続したとき、その土地の相続税の評価額を、一定の面積まで最大8割減らせるのが小規模宅地等の特例です。名前に「小規模」とありますが、広い土地が対象外になるわけではありません。面積に上限があり、その範囲の部分だけが減額されます。

売ったときの所得税の特例である空き家の3,000万円特別控除(国税庁)とは別の制度です。こちらは相続税の計算の特例で、使うには相続税の申告書を出します。個別の判断は税務署か税理士に確認してください。

小規模宅地等の特例とは、土地の評価額を面積の上限まで減らす制度です

国税庁は、相続の開始の直前に被相続人などの事業や居住に使われていた宅地等のうち一定のものを、限度面積までの部分について、次の割合で減額すると案内しています。

区分

限度面積

減額割合

特定居住用宅地等(自宅の敷地)

330㎡

80%

特定事業用宅地等

400㎡

80%

特定同族会社事業用宅地等

400㎡

80%

貸付事業用宅地等

200㎡

50%

貸付事業用を選ばず、自宅と事業用の両方を選ぶ場合の上限は合計730㎡です。貸付事業用を併せて選ぶと、面積を換算する調整計算が入ります。自宅の敷地が複数あるときは、主として住んでいた一つの宅地等だけが対象です。この記事は自宅の土地を中心に書きます。

小規模宅地等の特例の要件は、自宅を取得する人で3通りに分かれます

国税庁の表では、被相続人が住んでいた自宅の敷地を取得する人ごとに、要件が違います。

  • 配偶者:取得者ごとの要件はありません。
  • 同居していた親族:相続開始の直前から申告期限まで住み続け、土地も申告期限まで持っていること。
  • それ以外の親族(いわゆる家なき子):次の要件をすべて満たすこと。

家なき子の要件は、被相続人に配偶者がいないこと、同居していた相続人がいないこと、相続開始前3年以内に自分や配偶者、三親等内の親族、特別な関係のある一定の法人が所有する家屋に住んだことがないこと、相続開始時に住んでいる家屋を過去に所有したことがないこと、土地を申告期限まで持っていること、です。納税義務者の区分に関する要件もあります。3年以内の要件には経過措置があります。生計を一にしていた親族の住まいの敷地は別の欄で、その親族が申告期限まで住み続け、持ち続けることが求められます。

親が老人ホームなどに入って家が空いていた場合も、要介護認定などの要件を満たせば、居住の用に供されていた扱いになることがあります。ただし国税庁の質疑応答事例は、ほかに生活の拠点がありながら、特例を受けるためだけに入居した建物は拠点といえないとしています。住民票の住所だけでは決まりません。

相続した自宅は、申告期限の前に売ると要件を外れる場合があります

相続税の申告期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内です(国税庁)。前の章の要件では、同居の親族にも家なき子にも、土地を申告期限まで持っていることが求められています。申告期限より前に売買契約や引渡しを入れるなら、先に税務署か税理士へ確認してください。売る日は、申告期限から逆算して決めるほうが安全です。

申告期限までに遺産分割が終わっていないと、その申告では特例を使えません。国税庁は、分割後に特例を適用できるのは、原則として申告期限から3年以内に分割した場合に限ると説明しています。兄弟で共有する場合の進め方は共有名義の実家を売る話し合いにまとめました。

売った後の所得税には、相続税額の一部を取得費に加える特例もあります。国税庁によると、相続開始の翌日から申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売ることと、その人に相続税が課税されていることが要件です。特例で相続税が出ない結果になるなら、使えない可能性があります。手取りの考え方は相続した家の手取りをご覧ください。

相続税の申告が必要かは、基礎控除の式で確かめます

基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数です(国税庁)。債務や葬式費用を引いた正味の遺産額(一定の生前贈与は加算)がこれを超えると、申告が必要です。見落としやすいのは、この判定を小規模宅地等の特例を使う前の金額で行う点です。

仮の数字で見ます。法定相続人が3人なら基礎控除額は4,800万円です。自宅の土地3,000万円、建物500万円、預貯金1,700万円なら遺産は5,200万円で、申告が必要になります。土地が330㎡以内で80%減を使えば、土地は600万円、合計は2,800万円です。ただ、申告の要否は5,200万円で判定するため、申告書を出し、その中で特例を使う形になります。金額は説明用の仮定で、実際の評価額ではありません。

小規模宅地等の特例のチェックシートと必要書類は、国税庁の資料で確認できます

国税庁には相続税の申告のためのチェックシートがあります。申告全体の確認用ですが、小規模宅地等の欄に、居住と所有の継続、未分割の宅地に適用していないか、といった項目が並びます。

申告書には特例を受ける旨を書き、計算明細書、相続人全員を明らかにする戸籍謄本、遺言書か遺産分割協議書の写し、協議書に押印した全員の印鑑証明書などを付けます。分割が間に合わないときは、申告期限後3年以内の分割見込書も要ります。家なき子には、3年以内の住所や持ち家がないことを示す書類も加わります(国税庁「申告のしかた」)。提出先は被相続人の住所地の税務署です。申告要否判定コーナーでは、自宅の特例を使った税額のシミュレーションもできます。

自宅を売る可能性があるなら、申告期限の日付、土地を取得する人、売りたい時期の3点を書き出して、税務署か税理士に持って行ってください。

参考資料

制度・窓口情報は2026年10月13日時点で確認しています。個別の手続きは担当窓口や専門家にご確認ください。

この記事を書いた人

石川 智士

株式会社JA.life 代表取締役/宅地建物取引士・空き家マイスター・2級FP技能士

愛知県西尾市の株式会社JA.life 代表取締役。宅地建物取引業免許 愛知県知事(1)第25912号。 西尾市・三河エリアを中心に、不動産の売買仲介、買取、賃貸管理、空家・空地の管理を行っています。

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